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レスベラトロールは生殖補助医療を受けるPCOS患者のミトコンドリア生合成と生殖成績を改善する:ランダム化、三重盲検、プラセボ対象臨床試験

Resveratrol ameliorates mitochondrial biogenesis and reproductive outcomes in women with polycystic ovary syndrome undergoing assisted reproduction: a randomized, triple-blind, placebo-controlled clinical trial J Ovarian Res. 2024 Jul 10;17(1):143.

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)患者のミトコンドリア生合成と酸化ストレス、ARTの結果を改善する治療薬としてのレスベラトロールの可能性を評価したところ、レスベラトロールは、卵胞液中の総オキシダント状態(TOS)と酸化ストレス指数(OSI)を有意に低下させ、総抗酸化能(TAC)を増加させた。レスベラトロールの投与により、SIRT1とPGC-1αのタンパク質レベルが、プラセボ群と比較して有意に上昇した。また、ミトコンドリアの生合成に重要な遺伝子、PGC-1α、Nrf-1、TFAM、mRNAの発現を増加させた。レスベラトロール投与は、顆粒膜細胞におけるmtDNAコピー数とアデノシン三リン酸(ATP)含量を改善した。ARTの成績では、レスベラトロール群で卵子成熟度、高品質胚がプラセボ群と比較して有意に高かった。よって、レスベラトロールが生殖補助医療を受けるPCOS患者にとって有望な治療薬となりうることが示唆された。

PGC-1αとTFAMの発現はレスベラトロール群で有意に高かった(それぞれP=0.0032、P=0.0003)。Nrf-1 mRNAの増加は、両群間で有意差は認めなかった(P=0.0611)。

 

Abstract

背景:この研究は、PCOSの患者において、レスベラトロールがミトコンドリア生合成、酸化ストレス(OS)、生殖補助医療(ART)の成績に及ぼす影響を検討することを目的とした。

方法:PCOS患者56人をランダムに振り分け、レスベラトロール800mg/day、またはプラセボを投与した。主要アウトカムは卵胞液(FF)のOSとした。副次的アウトカムは、顆粒膜細胞(GCs)におけるミトコンドリア生合成、ミトコンドリアDNA(mtDNA)コピー数、アデノシン三リン酸(ATP)含量に関連する遺伝子及びタンパク質発現で評価した。ARTのアウトカムは試験終了時に評価した。

結果:レスベラトロールは、FFにおいてTOSとOSIを有意に低下させた(それぞれP=0.0142、P=0.0039)。一方で、総抗酸化能(TAC)を増加させた(P<0.0009)。レスベラトロールの摂取はまた、PGC-1αやミトコンドリア転写因子(TFAM)などのミトコンドリアの生合成に関与する重要な遺伝子の発現を有意に増加させた(それぞれP=0.0032、P=0.0003)。しかし、Nrf-1の発現に対する影響は、統計的に有意ではなかった(P=0.0611)。レスベラトロールは、SIRT1とPGC-1αのタンパク質レベルに有意な影響を与えた(それぞれP<0.0001、P=0.0036)。レスベラトロール投与は、GCsにおけるmtDNAコピー数 (P<0.0001)とATP含量 (P=0.0014)を改善した。

臨床的には、レスベラトロール群で卵子成熟度(P=0.0012)、高品質胚(P=0.0013)はプラセボ群より高かった。化学妊娠率および臨床妊娠率に関しては、両群間に有意差は認められなかった(P>0.05)。

結論:これらの知見は、レスベラトロールが生殖補助医療を受けるPCOS患者にとって有望な治療薬となりうることを示している。

コメント

PCOS患者のART成績は、非PCOS患者よりも悪く、その原因は卵母細胞の質と成熟度が低いことである可能性が示されました。レスベラトロールを投与することで、卵子の成熟が進み、胚の質が高くなるデータが示されました。レスベラトロールはその抗酸化作用によって、その他の病状の患者に対しても病状を緩和する可能性が複数報告されており、サプリメントとして容易に摂取できることから、臨床応用しやすいと考えられます。

レスベラトロールは天然のポリフェノール化合物であり、食品からの摂取も可能です。食品からの摂取量は多くはないが、地域差を加味して本邦で同様の検討を行う必要性を感じました。しかし、サプリメントの投与による長期間の調査は、被験者のライフスタイルのモニターや管理など壁が多いことから容易ではないことも事実です。

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