レスベラトロールは顆粒膜細胞における酸化ストレス誘導性アポトーシスを抑制し、卵巣環境を改善する
Resveratrol improves ovarian state by inhibiting apoptosis of granulosa cells Gynecol Endocrinol 2023; 23: 2181652..
レスベラトロールは顆粒膜細胞の酸化ストレス誘導性のアポトーシスを抑制し、卵巣機能を保護する可能性があることが示唆された。
Graphical Abstract
植物性ポリフェノールであるレスベラトロール(RES)は、サーチュイン遺伝子活性を介した抗老化作用を有し、マウス試験で加齢による卵巣機能低下への改善作用が認められています。ところが、卵巣におけるRESの分子機構については完全には明らかになってはいません。
そこで、中国の河北医科大学のLiangらは、ヒト顆粒膜細胞において過酸化水素(H₂O₂ )により誘発された酸化ストレス誘導性のアポトーシスに対するRESの作用メカニズムを評価しました。
35歳以下の不妊症女性(PCOS、POR、子宮内膜症を除く)から採卵時に顆粒膜細胞を採取し、H₂O₂ 群、RES群、そして、対照群にわけ、H₂O₂ 群には500μMのH₂O₂ で8時間処理し、RES群には500μMのH₂O₂ で4時間処理後、RESを、それぞれ、1μM、10μM、100μM添加し、さらに4時間処理しました。そして、対照群は、そのまま8時間処理し、それぞれの細胞アポトーシス率をフローサイトメトリーで検出し、比較しました。また、アポトーシスと増殖に関連するタンパク質やmRNAの発現量も比較しました。
その結果、まず、細胞アポトーシス率は、H₂O₂ 群で9.4%と最も高く、H₂O₂ 曝露による酸化ストレス誘導性のアポトーシスが引き起こされたことが示されました。一方、10μM RES群の細胞アポトーシス率はH₂O₂ 群に比べて有意に低く、対照群に匹敵するレベルまで低下しました。その一方、100μMでは、H₂O₂ 群に匹敵しました(図1)。
アポトーシスと増殖に関連するタンパク質やmRNAの発現量では、上記の結果からRESは10μMとした結果、タンパク質(図2)、mRNA(図3)、いずれの発現量においても、Bcl-2が増加し、反対にトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)やBax、カスパーゼ9が減少した一方、カスパーゼ8、カスパーゼ3、増殖分化因子9(GDF9)、骨形成タンパク質15(BMP15)レベルは有意差は認められませんでした。
本研究では、H₂O₂ による酸化ストレスモデルを確立し、RESの細胞増殖への影響を検討した結果、1、10 μM のRESがアポトーシスを有意に阻害する一方、100μMのRESでは認められないことが示されました。従って、RES補充量と期間は、ネガティブな作用を回避するためのさらなる検討が必要と考えられます。