Nicotinamide Mononucleotide Supplementation Reverses the Declining Quality of Maternally Aged Oocytes Cell Rep . 2020; 32: 107987.
この研究は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の投与が、年齢を重ねた女性の卵子の質の低下を逆転させる可能性を示した。本研究では、加齢に伴う卵子の質の低下が生殖能力の減少に関連していることに注目し、NMNが卵子の質を改善するメカニズムを解析した。具体的には、NMN投与により卵子内のミトコンドリア機能が改善され、卵子のエネルギー代謝を促進し、酸化ストレスが軽減されることで、卵子の質と生殖能力が向上されることを示唆した。
Graphical Abstract
母体の高年齢化は、卵子の質の低下と大きく関連しているが、それを改善する効果的なアプローチはまだ確立されていない。ここで我々は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の投与により、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)レベルが回復し、老化マウスの卵子の質を効果的に改善することを報告する。
NMNの投与は、老化卵子の排卵を増加させるだけでなく、正常な紡錘体/染色体構造と皮質顆粒成分オバスタシンの動態を維持することによって、減数分裂の能力と受精能力を高める。さらに、単一細胞のトランスクリプトーム解析から、老化した卵母細胞に対するNMNの有益な効果は、ミトコンドリア機能の回復によって媒介され、蓄積した活性酸素を除去してアポトーシスを抑制することが示された。
これらのデータを総合すると、NMNの投与は、母体の加齢により進行した質の劣化から卵母細胞を保護するための実行可能なアプローチであり、高齢女性の生殖予後の改善や生殖補助医療に貢献することが明らかになった。
コメント
本研究の結果は、加齢に伴う生殖能力の減少に対する新たな治療法の可能性を示唆し、特に高齢の女性における生殖医療に重要な意味を持つと考えられます。特にNMN投与が加齢による染色体の異数性増加を予防もしくは改善した結果は、今まで難しいと考えられてきた染色体異常に対する新たな治療法の可能性を示すものと考えられます。ただし、この研究は主に動物モデルに基づいているため、その結果を人間に直接適用するにはさらなる検証が必要です。また、NMN補充の長期的な影響や安全性に関するデータがまだ不足しているという意見も多く、臨床応用への道のりは複雑です。