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加齢が卵丘細胞のミトコンドリア活性を低下させる可能性

Advancing Age May Decrease Mitochondrial Activity in Cumulus Cells J Clin Med. 2024 May 9;13(10):2800. doi: 10.3390/jcm13102800.

この論文は、加齢が卵丘細胞(CC)のミトコンドリアに与える影響を調査しています。CCは卵子の周囲にあり、卵子の成熟や質に大きな役割を果たします。研究では、加齢がミトコンドリアの機能を低下させる可能性が示されており、これは卵子の質の低下や生殖能力の減少に繋がると考えられます。この研究は、加齢とともに卵子の質が低下するメカニズムの理解に貢献する可能性があります。

加齢により卵丘細胞(CCs)のMFIが顕著に減少、併せて採卵数および正常受精数も顕著に減少している。一方で、その他のパラメータである、卵子成熟率、受精率、胚盤胞到達率などに差はなかった。(CCs:卵丘細胞、 ICSI:卵細胞質内精子注入法、IVF:体外受精、MFI:平均蛍光強度、PN:前核。a オッズ比、* 統計的に有意なp値<0.05。)

 

背景:本研究の目的は、若年女性と高齢女性の卵丘細胞(CC)におけるミトコンドリア活性を比較すること、ミトコンドリア活性に影響を与える因子、およびそれらの因子と胚盤胞の質との関連を検討することであった。

材料と方法:この前向き研究では、2023年5月から10月の間に顕微授精を受けた80名の不妊女性を対象とした。参加者は38歳以上と38歳未満の2群に分けられた。CCからの卵子ミトコンドリア活性はMitoTrackerを用いて評価し、平均蛍光強度(MFI)も評価した。

結果:単変量解析および多変量解析の結果、38歳以上の女性とそれ以下の年齢群との間でMFIに有意差が認められた(162.68±79.87 vs 228.39±121.38; p値=0.005; 95%CI 19.97, 111.45)。

MFIに影響を与えた因子は、38歳以上の女性(p値=0.005;95%CI -111.45, -19.91)、ゴナドトロピンの総投与量(p値=0.006;95%CI -0.08, 0.01)、ゴナドトロピン放出ホルモン作動薬(GnRHa)の誘発(p値=0.006;95%CI 36.46, 210.06)であった。しかし、38歳以上の女性のみが多変量回帰分析後も統計的に有意であった(p値=0.014;95%CI -121.00, -14.30)。

さらに、単変量解析および混合多変量解析では、男性年齢(平均年齢±SD=38.26±5.13)のみが高胚盤胞質と関連していた(OR 0.91;95%CI 0.56,3.04)。

化学的妊娠率は2つの年齢群で有意差はなかった(34.5%対56.7%;p値=0.162;95%CI 0.2, 1.30)。

結論:年齢の上昇は、CCにおけるミトコンドリア活性を低下させたが、胚盤胞の質には影響しなかった。対照的に、男性の年齢は高グレードの胚盤胞の質を予測する因子である可能性がある。

コメント

この論文は、加齢が卵子周囲のCCにおけるミトコンドリアの活性に与える影響を評価しています。結果は、加齢によりCCのミトコンドリア活性が低下したが、それが卵子の質(胚盤胞のグレード)との関与は確認できませんでした。採卵後のCCを用いた臨床研究はCCの扱いが難しく、本研究のプロトコールが目的に適しているか疑問が残ります。

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