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ケルセチンはAKT-ERK-p53シグナルを介して脱落膜化を促進し、子宮内膜症における細胞老化の関与を支持する

Quercetin enhances decidualization through AKT-ERK-p53 signaling and supports a role for senescence in endometriosis Reprod Biol Endocrinol. 2024 Aug 8;22(1):100. doi: 10.1186/s12958-024-01265-z.

この論文は、ケルセチンがAKT-ERK-p53シグナル経路を介して子宮内膜間質細胞の脱落膜化を促進し、子宮内膜症における細胞老化の役割をサポートすることを示しています。ケルセチンは、細胞老化を調節し、子宮内膜症の進行を抑制する可能性が示唆されました。加えて本研究は、ケルセチンが子宮内膜症の治療において有望な補完療法となり得ることを示唆し、新たな治療ターゲットとして細胞老化の重要性を強調しています。

Graphical Abstract

Graphical Abstract ケルセチンはAKT-ERK-p53シグナルを介して脱落膜化を促進し、子宮内膜症における細胞老化の関与を支持する
ケルセチンは、AKTおよびERK1/2経路を阻害し、p53の安定性とアポトーシスを増強することにより、子宮内膜間質細胞のアポトーシスを促進する。緑と赤の実線はそれぞれ、我々のデータに基づくプラスとマイナスの効果を示す。赤の破線は、提案されている負の効果を示す。

 

背景:子宮内膜症患者は、慢性的な骨盤痛と不妊に悩まされ、一貫して病気の進行を止める薬理学的治療法がないことに苦しんでいる。また、子宮内膜症患者の子宮内膜とそうでない対照者の子宮内膜の違いはよく知られている。

具体的には、排出された子宮内膜組織(逆行性月経によって骨盤腔に送られる)から、炎症性、線維化促進性、および老化促進様の表現型を示す間質細胞のサブセットが、対照群と比較して子宮内膜症患者では増加することが明らかになっている。さらに、子宮内膜症患者から採取された培養生検由来の子宮内膜間質細胞は、ヒト胚の着床と妊娠に必要な分化プロセスである脱落膜化の障害を示している。

一方、老化防止剤であるケルセチンは、老化した肺線維芽細胞に起因する疾患である肺線維症に対する治療の可能性を示している。子宮内膜症の齧歯類モデルではケルセチンは有望であり、in vitroで脱落膜化を改善する。しかし、その正確なメカニズムは完全には解明されていない。

そこでわれわれは、子宮内膜間質細胞に対するケルセチンの作用の根底にあるシグナル伝達経路を明らかにするために、子宮内膜症患者と罹患していない対照者における、月経流出液由来の子宮内膜間質細胞に対するケルセチンの作用を調べた。

方法:月経流出液由来の子宮内膜間質細胞を、子宮内膜症患者と罹患していない対照者から採取し培養した後、低継代細胞を基礎的または標準的な脱落膜化条件下にてケルセチン(25μM)で処理した。IGFBP1とPRLの産生を測定することにより、子宮脱落膜化反応を分析した。

また、ケルセチンの細胞内cAMPレベルおよび細胞酸化ストレス応答に対する影響も測定した。様々なシグナル伝達経路に対するケルセチンの効果と、ケルセチンの潜在的なメカニズム的役割を明らかにするために、ホスホキナーゼアレイ、ウェスタンブロッティング、フローサイトメトリー法を行った。

結果:ケルセチンは、コントロール細胞および子宮内膜症間質細胞の脱落膜化を有意に促進した。ケルセチンは、AKTおよびERK1/2経路における複数のシグナル分子のリン酸化を大幅に減少させる一方で、p53のリン酸化および総p53レベルを増強した。さらに、p53の阻害は脱落膜化を阻害する一方で、p53の活性化は脱落膜化を促進する。最後に、ケルセチンが老化に似た表現型を持つ子宮内膜間質細胞のアポトーシスを増加させるという証拠を提供する。

結論:これらのデータは、ケルセチンの子宮内膜間質細胞に対する作用機序についての洞察を与えるものであり、子宮内膜症を治療するためのケルセチンや他の抗老化薬を試験する将来の臨床試験を保証するものである。

コメント

この研究はケルセチンの作用メカニズムに焦点を当てており、子宮内膜症の治療における新たな治療法の可能性を示唆しています。ただし、研究結果が臨床応用にどの程度反映されるかを確認するためには、さらなる大規模な臨床試験が必要です。

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