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妊娠初期の切迫流産女性における血清ビタミンD濃度と流産率の関連性

Association of serum vitamin D concentration and miscarriage rate in women with first-trimester threatened miscarriage Reprod Biomed Online 2024; 49: 104076

妊娠初期に切迫流産を経験した女性における血清ビタミンD濃度と流産率の関連を調査しています。ビタミンDは免疫調節機能や抗炎症効果を持ち、妊娠の維持に重要な役割を果たすとされています。興味深いことに、ビタミンD濃度が十分な女性は、欠乏している女性に比べて流産率が有意に高いことが示されました。しかし、本研究の結論としては「血清ビタミンD濃度の低値は、切迫流産女性における流産リスクの上昇とは関連しなかった。」としています。

ビタミンD不足群とビタミンD充足群を「非欠乏群」に分類し、ビタミンD欠乏群と比較した。妊娠中絶を行った人を除くと、ビタミンD欠乏群と非欠乏群では流産率に有意差はなかった(それぞれ12.2%対12.7%、P = 0.877、OR 0.951、95%CI 0.507-1.784)。妊娠週数別に解析すると、妊娠6週またはそれ以前に受診した女性では、ビタミンD非欠乏群の流産率がビタミンD欠乏群と比較して有意に高かったが(13/33[39.4%]対10/58[17.2%]対、P = 0.019)、それ以降に受診した2群間に統計学的有意差はなかった。

 

研究課題:血清25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の低値は、妊娠初期評価クリニック(EPAC)に切迫流産で受診した女性における流産リスクの上昇と関連するか?

デザイン:無作為化二重盲検プラセボ対照試験の保存血清サンプルを用いた二次的レトロスペクティブ解析である。妊娠初期に切迫流産でEPACを受診した女性371人の保存血清サンプルから、液体クロマトグラフィー質量分析法により25(OH)Dを測定した。

結果:全コホートにおける流産率は45/371(12.1%)であった。ビタミンD不足群とビタミンD充足群をまとめて「非欠乏群」とし、妊娠中絶を行った参加者を除外したところ、ビタミンD欠乏群と非欠乏群との流産率に差はなかった(25/205、12.2%対20/157、12.7%、P= 0.877、オッズ比0.951、95%CI 0.507-1.784)。

妊娠週数別に解析すると、妊娠6週またはそれ以前に受診した女性では、ビタミンD非欠乏群の流産率がビタミンD欠乏群より有意に高かったが(13/33例[39.4%]対10/58例[17.2%]、P= 0.019)、それ以降に受診した2群間に統計学的有意差はなかった。流産した女性のビタミンD値は、生児を出産した女性と比較して差はなかった(48[37-57]nmol/l対47[37-58]nmol/l、P= 0.725中央値[25-75パーセンタイル])。

結論:血清ビタミンD濃度の低値は、EPACに来院した切迫流産女性における流産リスクの上昇とは関連しなかった。

コメント

ビタミンDが妊娠維持に与える影響について重要な情報が提供されています。今回の結果は、予想に反してビタミンDの不足は流産リスク影響を与えないというデータになりました。これは、臨床的意義が大きい情報であると考えます。

今後、より大規模かつ多様な集団を対象とした研究が求められます。ビタミンDは妊娠維持に重要な働きをしていると報告されており、ビタミンD不足であればサプリメントで補充するのが当たり前になりつつあります。今回の研究結果は、その流れに疑問を呈するエビデンスの一つとなります。

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