若いマウスの卵胞内微小環境への曝露による老化卵子の若返り
Rejuvenation of aged oocyte through exposure to young follicular microenvironment Nat Aging. 2024 Sep;4(9):1194-1210. doi: 10.1038/s43587-024-00697-x. Epub 2024 Sep 9.
この論文は、加齢によって質が低下した卵子を若い卵胞微小環境にさらすことで、卵子の質を回復させる可能性について調査した研究です。これまでの研究から、加齢に伴い卵子のミトコンドリア機能低下や活性酸素種(ROS)の増加、染色体異常が発生し、これが妊娠率低下や胚発育の問題につながると報告されています。
この研究では、老化した卵子を若い卵胞の微小環境に移植することで、若い卵胞微小環境に曝露された老化卵子は、ミトコンドリア機能が改善し、酸化ストレスが低減され、染色体異常も減少することを報告しています。加えて、胚の発育能力や着床率が向上し、老化による生殖能力の低下が改善したと報告しています。
Abstract
生殖機能の老化は生殖能力低下の主な原因であり、卵子の量と発育能の低下に起因する。その原因として考えられるのは、栄養や制御因子を供給することで卵子の成長と発育を支えている周囲の卵胞体細胞の老化である。
ここでは、キメラ卵胞を作製し、ある卵胞の卵子を、別の卵子を除去した卵胞内に移植して培養することにより、老化した卵胞内で培養した若いマウスの卵子では減数分裂の成熟と発生能が阻害されるのに対し、若いマウスの卵胞内で培養した老化卵子では、卵子成熟率と胚盤胞形成率、体外受精および胚移植後の生産率が有意に改善されることを示した。
加齢卵子のこの若返りは、体細胞との相互作用の強化、トランスクリプトームおよびメタボロームリモデリング、ミトコンドリア機能の改善、減数分裂染色体分離の高い忠実性と関連していた。これらの知見は、将来、卵胞体細胞を用いた女性不妊症治療の基礎となるものである。
コメント
この研究は、卵子老化のメカニズムに対する理解を深め、新たな治療戦略のために役立つ情報を提示してくれていると考えます。今後、この研究で得られた情報から新たな治療法の確立に向けた研究が進んでいくことが期待されます。総じて、この研究は高齢女性の不妊治療に希望を与える重要な発見であり、生殖医療における卵子老化対策の新たな方向性を示しています。