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精子DNA断片化が体外受精/顕微授精の累積生児出生率に及ぼす影響

Effect of sperm DNA fragmentation on the cumulative live birth rate in patients undergoing in vitro fertilization/intracytoplasmic sperm injection treatment Andrology. 2024 Sep 5. doi: 10.1111/andr.13754. Online ahead of print.

体外受精(IVF)/顕微授精(ICSI)治療を受けた患者を対象に、精子DNA断片化が累積生児出生率に及ぼす影響を分析した論文です。

ICSI症例では、精子DNAの断片化が進むにつれて累積出生率が有意に低下し、この影響は女性の年齢が高くなるほど強くなることが示されました。IVF患者においても、精子DNA断片化と累積出生率との間に同様の相関パターンが認められましたが、その相関は有意ではありませんでした。

 

精子DNA断片化(SDF)と累積生児出生率(CLBR)の相関。体外受精(IVF)患者(A)および顕微授精 (ICSI)患者(B)、ならびに女性の年齢で層別化した部分集団(CおよびD)について、一般化加法モデルを用いて平滑曲線を作成した。SDF値は平方根変換(sqrt)した。

 

背景

精子DNA断片化検査は、通常の精液検査とは別に男性不妊を予測するための貴重なツールである。しかしながら、精子DNA断片化がIVF/ICSIの成績、特に生児出生率に影響を及ぼすかどうかは依然として不明である。

本研究の目的は、精子DNA断片化がIVF/ICSI治療1年間の累積生児出生率に及ぼす影響を調査することである。

方法

このレトロスペクティブ研究は、2016年から2022年までにIVF/ICSI治療を受けた5050組のカップルを対象とした。

これらの患者は、精子クロマチン分散試験を用いて、精子DNA断片化率によって4群(第1群:精子DNA断片化率≦10%、第2群:>10%~≦20%、第3群:>20%~≦30%、第4群:>30%)に分けられた。

主要アウトカムである累積生児出生率の推定には、保守的な方法と楽観的な方法の両方が用いられ、「最初の採卵後1年以内に行われたすべての胚移植から生じた、生児出生に至る継続的な妊娠」と定義した。

結果

全患者およびIVF患者を交絡因子で調整しながら解析した場合、保守的累積生児率および楽観的累積生児率は精子DNA断片化群間で有意差を示さなかった。

しかし、精子DNA断片化率が低い群(≦10%)に比べ、精子DNA断片化率が30%を超える群のICSI患者では保守的累積生児率が有意に低下し、精子DNA断片化率が高い3群(>10%~≦20%、>20%~≦30%、>30%)のICSI患者では楽観的累積生児率が有意に低下した。これらの結果は、一般化加法モデルによって作成された平滑曲線の解析によってさらに確認された。

ICSI症例では、精子DNAの断片化が進むにつれて累積出生率が有意に低下し(p = 0.034)、この影響は女性の年齢が高くなるほど強くなった。

IVF患者においても、精子DNA断片化と累積出生率との間に同様の相関パターンが認められたが、その相関は有意ではなかった(p = 0.232)。

考察と結論

精子DNAの断片化は、ICSIを含む治療の1年間に生児出産を達成する累積確率に有意な影響を及ぼす。

コメント

IVF患者においても、有意差を認めなかったものの、精子DNA断片化率が高くなるにつれて、累積出生率が低下する傾向がみられました。しかし、IVFでは群間で患者数の差が大きく、特に精子DNA断片化率30%以上の患者は、体外受精患者全体の4534人中207人と少なかったことも考慮すべきであると考えます。

また、レスキューICSI症例は検討から除外されており、今回の研究に対する体外受精の評価として十分であったかは疑問です。

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